落語「鼠穴」その2

鼠穴2

落語の「鼠穴」というお話の序の部分から、多動力ということが学べるということを書きましたが、今回はこの話の後半から学んでみたいと思います。

兄を頼って、金の無心をして3文しかもらえず怒ったものの、考え直して今できることを一生懸命行って一財産を築いたというところまでお話ししました。

さて、その後、竹次郎は兄から借りた仕事の元手になる資金を返さなければならないと考えます。封筒に3文を入れて、そのほかに十両の金を用意します。家を出る際に番頭に、火の元を気を付けるように、万が一のために蔵の鼠穴を塞いでおくように指図します。竹次郎は兄の家に行き3文を返すと「おめえ、よくこれを使いこまなかったな」と嫌味を言われます。借りたお礼にと十両を渡すと兄はたいそう喜んでくれます。その後、酒宴となり昔話がはずみます。お互い機嫌が良くなったころに、兄は「この身代を譲ってもいい」と話します。
酒も効いてお互い眠くなったころに早鐘が鳴る。どこかで火事が生じたらしい。場所はと聞くと竹次郎の家の近くだという。急いで家に帰ると、火の手はもうすぐそばまで来ている。大事なものを蔵に入れるように言っているそばから火が家につき始め、あっという間に全焼となる。蔵も鼠穴があったせいで、火が入り見る間に中から焼け落ちてしまい、すべてを失ってしまいます。
無一文になった竹次郎が頼れるのはやはり兄しかいません。また仕事も元手を貸してほしいと嘆願する。「いくら欲しい?また三文やるべか?」「百両貸してほしい」と願うが、それはできないと無下に断られる。家財産があり事業を展開していた状況では、百両でも二百両でも貸してもいいが、無一文では貸せないというわけです。「でも兄さんは、俺に身代譲ってもいいといったでねえか!」と訴えるが、「あれは酒の上での放言だ」と言い捨てられ、家から放り出される。
悲しんでいる竹次郎に娘が、自分を吉原に預けて金を借りればいいという。泣きながら娘を女郎屋に預けて50両の金を用意してもらう。しかし帰り道にその金を悪いやつにスラれてしまう。途方に暮れた竹次郎は首をくくって死のうとする。
ううっと苦しんでいるところに兄の声がする。「竹、ずいぶんうなされているがどうした?」
気が付くと、そこは兄の家である。どうやら酒のせいでそこに寝入ってしまったらしい。つまり、火事以降のことは夢だったという話です。

竹次郎の波乱万丈の人生話ですが、成功したところは現実で、悲惨な部分は夢だったということで、なんとなく救われた気分になりますね。

さて、ここから「人を全面的に信用してはいけない」ということが学べます。
竹次郎の兄が三文を貸したのは、苦労して仕事を学べという教訓を教えたかったわけではありません。ただのしみったれだったのです。三文の貸しに対して十両の謝礼を遠慮なく受け取るところからもよくわかります。実の弟が浪費癖のためとはいえ無一文になって途方に暮れているのに、三文しかやらない兄って何だろう!

結局、人とのつながりよりお金を大事にするような人のことは絶対信用してはいけません。
もちろん、お金のことはきちんとすべきです。親しい中にもけじめは必要です。
それでも、焼け出されて途方に暮れている弟に、また三文しか貸せない兄、前言は酒の上だとうそぶく兄、困っている弟を情け容赦なく放り出す兄。人間ではありません!
しかし考えてみると、世の中にはこんな人が多いように感じます。宝くじに当たると急に親戚が増えるそうです。事業を始めるときはかかわりになろうとしないのに、成功するとおこぼれにあずかろうと近づいてくる親族は多くいます。親戚だから、親しいんだからサービスしろと臆面もなく言ってくる人間もいます。

繰り返しますが、人とのつながりよりお金を大事にするような人のことは絶対信用してはいけません。

私は、自分で事業を始めて、個人事業主として16年間働きそれなりに仕事を大きくしてきました。それでも、生活のレベルを極端に変えることはなかったので、自分が社会的成功者とは傍目には見えなかったのでしょう。誰もたかりには来ませんでした。それでも、自営の仕事をしていると聞くと、友人知り合いが、自分を使ってほしいと頼みに来ました。仕事の内容を聞くことなしにです。細々やっているから、人を雇うことなんてできないというと、二度と連絡してきません。そんなもんです。
今なら、竹次郎の気持ちがわかります。人に頼らず、自分の力で、努力で道を切り開くしかないのです。人の金を当てにしてはいけません。また、金を当てにしてくる人間とも関わり合いにならないようにします。

本当に大切なのは、私利私欲のない本当の人間関係だけです。
最近は、しみじみとそれを感じます。

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