イメージトレーニングの効果
よく、優れたスポーツ選手はイメージトレーニングを行っていると言われています。
野球であれば相手ピッチャーが投げる試合を思い描き、ボールかどんな軌道で来るのかどのくらいのタイミングでバットを振りだすのか、ボールが曲がる様子をイメージしつつ自分のベストなポジションで芯でとらえる。そして振り抜く 。サッカーでもテニスでも、体操やフィギュアスケートでも、一流のアスリートがイメージトレーニングをしています。
また怪我をした時には、治療しながらイメージトレーニングを欠かさないようにすると、回復した時にまた同じようなプレーパフォーマンスを行うことができると言われています。それでも筋肉は衰えるのではないか。かんは戻らないのではないかと考えたくなりますが、実はイメージが具体的であればあるほど、実際に体を動かしていなくても、動かしたと同じように脳からの信号が行き、筋肉を動かしたと同じほどの効果があるそうです。極端に激しい動きが要求されるものでなければ、休養中でも 同じように動くことができます。

旧ソ連の話ですが、 言われなく犯罪者にされ投獄されたピアニストが、数年間服役した後 、無実が晴らされて、またステージに復帰することになったそうです。彼の復帰を待ちかねていたファンたちは、出所後早々にステージを設けてコンサートを開催したそうです。しかし、彼としては2年間ピアノの鍵盤に触れてもいなかったのです。どうなったでしょうか。
彼は見事に難しい曲を弾きこなし、拍手喝采を浴びることとなりました。実は彼は牢屋の中にいる間中、復帰することを信じてイメージトレーニングを続けていたのだそうです。
同じようなことは、バイオリニストの話としても、またスポーツ選手の話としても存在しています。
この点で興味深い研究があります。1995年パスカル・リオーネ博士達が発表した論文です。
この研究ではピアノやその他の楽器などの演奏経験がない男女9名を3人ずつ以下のグループにわけて実験を行ったものです。
① ピアノの実践練習を1日2時間5日間行った。
② ピアノには一切ふれずにイメージトレーニングのみ。実際の音や鍵盤を動かしているイメージのみで指は動かせない状態。
③ 実践練習もイメージトレーニングも行わない状態。
そして5日の実施期間を終えて、実際にピアノを演奏させてその正確性や精度を測った結果ですが、
もちろん1番上達を見せたのは①のグループです。
しかし面白いことに、②のメンタルトレーニングを実施していたグループは③の何もしていないグループよりも、遥かに高いパフォーマンスを演じたのだそうです!
この後、TMSという脳を測定する機器を使い脳を測定した結果、5日間の練習により、①のグループの脳が活性化されたことと同時に②のグループも同じように脳が活性化されていたということが分かりました。
つまり、イメージトレーニングをした人たちの脳内は、実際に練習していた人と同じように活発に働いていたということなのです。
さらに、その5日間の練習後に②のグループのみ2時間の実際のピアノの練習をした結果、なんと、①のグループとほぼ同レベルまで技術が向上したというのです!
つまり、イメージトレーニングは実際の練習を効率化させて、上達を促進する効果があるということが証明されたわけです。
最近の脳の研究で分かってきたことですが、脳は実際に行動した現実と、鮮明にイメージしたことを区別するのが苦手であるということが分かりました。子供がテレビで見たことを現実だと思い込むのと似ています。
言い換えるとイメージトレーニングとは、脳を騙すことかもしれません。
もちろん、ただイメージをしているだけではパフォーマンスは上達するわけではありません。実際の反復練習も必要です。しかしそれに加えて、イメージトレーニングを何度も繰り返し行うことによって、実際の動きと組み合わせれば抜群に効果があるということです。
イメージトレーニングとは、脳のトレーニングであり、脳の働きやすでにできている脳の伝達経路を強化することです。実のところいろいろなパフォーマンスは、イメージがあって初めて体で表現できるものです。脳はイメージを実現しようとするのです。
それで、持続させたいこと実現したいことを、具体的にイメージすることは大切です。その時の感触感覚をありありと思い描くようにしてください。
あなたはどんなパフォーマンスを身に着けたいでしょうか?では、そのイメージをはっきりと思い描いて、何度も繰り返して見てください。その後の練習がいつもより捗るのに気づくでしょう。

コメント