すごいのか、すごくないのか分からない話

世の中には、すごいのかすごくないのか、よく分からない話ってあるものです。

ソ連軍が他国では作れない驚くような潜水艦を作ってしまったことがありました。
潜水艦は海の底の薄暗いところを進むので、目で見て判断するのではなく、レーダーで周りの状況を察知します。また、音を聞いて状況判断します。潜水艦はエンジンで動きますから、エンジン音が生じます。ですから、このエンジン音で互いの存在を知り、不必要に近づかないようにできます。ところが、この新開発のソ連軍の潜水艦は音を外部に漏らさない設計になっているのです。つまり、他国の潜水艦に音を捕捉されないので、物陰からソーッと近づき、一気に攻撃して沈めることができるのです。(あ、初めから沈んでいますけど。いやいや、潜っているんです。)

そのために、この新開発の潜水艦は世界中から恐れられ、この無敵の潜水艦は対抗不能と言われました。この設計者は天才と讃えられ、ソ連の救世主としてスターリンから特別な栄誉を受けました。
しかし、物事にはどこかしらに穴があるものです。いくら天才といわれていても、予想しないできないことってあるわけです。この新開発潜水艦は、戦うことなく浮上し、ハッチから白旗を出し降伏したのです。その敗因は実に意外なことで、まさにおマヌケなことでした。

この特別な潜水艦には、乗組員たちもエリートの精鋭が選ばれ最高のパフォーマンスを引き出せるよう準備されていました。とはいえ、どんなエリートでもいざ戦闘となれば緊張するものです。緊張すればトイレも近くなります。


スクランブルが発令され各乗組員に戦闘準備が求められると、それなりの人数はまずトイレに行きます。トイレはもちろん水洗ですし、船外に排出されるよう設計されていますが、実はこのトイレの排出方法が問題だったのです。普通の船であれば、用をたしたあと、洗い流す、船外へ排出するふたを開ける、となるわけですが、この船の場合は、順番が逆で、必ず前もって船外への排出弁を開けてから流すボタンを押さなければなりません。このことは乗組員すべてにきちんと説明されていましたが、緊急時には誰しも慌てるものです。わかっているのに、なぜか忘れることがあります。


スクランブルがかかり、配置につく前にトイレに行く。慌てているので、流すボタンを押してから排出弁を開くボタンを押してしまう。中には、陸上にいるときと同じに、流すボタンを押しただけで出ていく者もいる。

で、どうなったのか。
トイレの汚物の排出がうまくいかず、パイプが詰まり始め、接合部から次第に汚水が漏れてきはじめたのです。これがまた間の悪いことに、その下にはエンジン関連の熱を持つ機材があり、汚水が垂れるたび勢いよく蒸発させます。これが繰り返されることで、潜水艦の艦内は悪臭がたちこめ、息を吸うのも耐えられない状況になったということです。想像したくもないのですが、近くに汲み取りやさんがきただけで、臭いなあと思い窓を閉めたくなるのに、その汚物が焼かれて臭いが倍増されて鼻をつくわけです。まさに阿鼻叫喚。

結局、この潜水艦の艦長も我慢しきれなくなり、他国の戦艦がそこにいるのを分かった上で浮上し、白旗を出し、助けを求めたということです。


そこにいたのはイギリスの軍艦で、目の前に潜水艦が浮上したかと思ったら、白旗が出され、ワラワラと乗組員が出てきて、のたうち回りながら助けを求めているのを、ただただ驚いて見ていたわけです。

さらにオチがあります。


このソ連の潜水艦の小さなハッチから漂う悪臭は、何十メートルも離れているイギリス艦の甲板にも届き、イギリス軍乗組員を悶絶させたということです。

屈強のソ連軍エリートたちに、捕虜になってもここから逃れたいと思わせた臭いとは。
一体、中の様子はどうだったのだろう?


いや、想像したくはない!

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